* 目次 [#ieb16d68]
#contents
ここでは、自営業のエンジニアが自衛するために知っておくべきこと をシェアしたいと思います。残念ながら、こうした知識は誰も教えてくれないため、自分で気づき、学んでいくしかありません。
実際、案件を仲介する会社の多くは、必ずしも公平な契約書を提示してくれるわけではありません。そのため、まずは契約書をダウンロードし、ChatGPTなどのAIツールを使って内容を確認すること を強くおすすめします。
さらに注意すべきは、契約書を電子的にしか提示せず、閉じられた環境でサインを強要するケース です。このような場合、契約書を自分の手元に残せないため、非常に不利になります。業務用に与えられたPC上で電子契約を行ってしまうと、控えを保存できず、後で確認や交渉が困難になることもあります。
必ず自分のPC上で契約を行い、控えを保存すること。 これが自営業者として最低限の自衛策です。
「控えを渡せない契約にはサインしない」 を原則にしましょう。もし業務委託先が拒否するなら、その会社自体がリスクの高い相手と判断できます。
* 契約書で避けたい条項リスト(エンジニア視点) [#j0403204]
** この記事の目的 [#y0985f64]
中間業者が入る契約で、エンジニアに不利になりがちな条項を俯瞰し、交渉時に即参照できる形で整理します。最初は個人で営業外注を前提とし、将来メンバーが増えた場合にも使い回せるドキュメント構造にしています。
** 前提と使い方 [#pb128450]
- 本ページは「チェックリスト」と「修正文テンプレ」をセットで掲載。
- 契約ごとにチェックを入れ、該当する箇所はテンプレで修正提案。
- 法的助言ではありません。重要事項は専門家に確認してください。
** 用語の簡易定義 [#f081173d]
- SES(準委任): 一定期間、業務遂行を約する契約(成果保証は原則しない)。
- 受託(請負・成果物): 合意した成果物の完成・検収を条件に報酬が発生。
- 直接損害 / 間接損害: 直接損害は通常予見可能な損害。逸失利益などは間接損害に含まれることが多い。
** チェックリスト(ひと目で確認) [#b2dcbb26]
|区分|要注意ポイント|望ましい状態|確認|
|知財|成果物の**著作権全面譲渡**|利用許諾(非独占、利用範囲明確)に限定|[ ]|
|知財|**契約外**(副業・私物リポジトリ等)まで権利包含|「本契約業務で創作した成果物」に限定|[ ]|
|副業/競業|**広すぎる競業避止義務**|顧客・機密情報の不正利用に限定|[ ]|
|副業/競業|**副業禁止**|本契約に支障がない範囲で副業可|[ ]|
|責任|**無制限の損害賠償**|上限=当該契約額(累計 or 直近◯ヶ月)|[ ]|
|責任|**間接損害(逸失利益等)も賠償対象**|直接かつ通常の損害に限定|[ ]|
|更新/解除|**一方的即時解除**(軽微な事由でも)|重大な違反時+治癒期間付与|[ ]|
|労働拘束|**時間/場所の固定・過剰な監督**|独立性・裁量を確保(合意した報告頻度)|[ ]|
|支払い|**支払サイト60日超**|原則30日以内(検収基準明確化)|[ ]|
|検収|**検収・受領の定義が曖昧**|「納品日から◯営業日以内に検収/支払」|[ ]|
** 1. 知的財産・著作権 [#m73e16f3]
*** 1-1. 全面譲渡条項 [#iaf42528]
問題例(要修正):
納品物および関連する一切の著作権は、甲に無償で譲渡されるものとする。
解説: 再利用・ポートフォリオ掲載・派生開発の自由を失う可能性が高い。
望ましい修正案:
甲は本件成果物について、契約目的の範囲で非独占的に利用できるものとする。著作権は乙に留保される。
*** 1-2. 範囲過大条項(副業・私物まで包含) [#gf5a82b3]
問題例(要修正):
期間中に乙が創作した一切の成果は甲に帰属する。
望ましい修正案:
権利帰属の対象は「本契約に基づく業務の遂行により創作された成果物」に限定する。
** 2. 副業・競業禁止 [#ya7acd0d]
*** 2-1. 広すぎる競業避止 [#ya2e7e12]
問題例(要修正):
乙は契約期間中および終了後2年間、甲の事業と競合する一切の業務に従事しない。
望ましい修正案:
乙は顧客情報・機密情報を不正に用いて甲と競合する行為を行わない。期間・地域は必要最小限に限定する。
*** 2-2. 副業禁止 [#ba26fac4]
問題例(要修正):
乙は期間中、甲の事前承諾なく一切の副業を行ってはならない。
望ましい修正案:
本契約の履行に支障がない範囲で副業可。機密保持義務は遵守する。
** 3. 損害賠償責任 [#k67fe0dd]
*** 3-1. 無制限賠償 [#wa2fc17e]
問題例(要修正):
乙は甲に生じた一切の損害を賠償する。
望ましい修正案:
乙の賠償責任は、当該契約に基づき乙が受領した対価総額(または直近◯ヶ月分)を上限とし、間接・特別・逸失利益は除外する。
*** 3-2. 間接損害の包含 [#de0803d5]
問題例(要修正):
乙は逸失利益を含む全損害を賠償する。
望ましい修正案:
賠償対象は直接かつ通常生ずべき損害に限定する。
** 4. 契約更新・解除 [#h29cf985]
*** 4-1. 一方的即時解除 [#g73854ae]
問題例(要修正):
甲は任意に本契約を即時解除できる。
望ましい修正案:
重大な契約違反があり、相当期間内に是正されない場合に限り解除できる。
*** 4-2. 終了時ペナルティ [#ycfed03f]
問題例(要修正):
契約終了時に違約金を支払うものとする(理由不問)。
望ましい修正案:
通常終了に伴う違約金は発生しない。損害がある場合は前項に従う。
** 5. 労働に近い拘束 [#ged6b069]
*** 5-1. 固定時間・場所の拘束 [#dc0c2ce7]
問題例(要修正):
乙は平日9-18時に甲所定の場所で業務を行う。
望ましい修正案:
成果/稼働ベースで協議のうえ柔軟に対応。必要な打合せ以外は場所・時間は乙の裁量とする。
*** 5-2. 過剰な監督義務 [#cbb1abdc]
問題例(要修正):
乙は日々の細目報告と逐一の指示承認を受ける。
望ましい修正案:
週次/隔週など合意した頻度で進捗共有を行う。
** 6. 支払い条件 [#h63e1ef5]
*** 6-1. 長すぎる支払いサイト [#ped0131e]
問題例(要修正):
検収後、翌々々月末日払い(約90日)。
望ましい修正案:
検収完了後30日以内に支払う。
*** 6-2. 検収基準の曖昧さ [#x5e99d54]
問題例(要修正):
検収日は甲が任意に定める。
望ましい修正案:
「納品受領日から◯営業日以内に合否通知。合否通知なき場合は翌営業日に自動検収」等を明記。
** 修正文テンプレ(そのまま提案可) [#hdbe9f9c]
- 著作権の留保:
本件成果物の著作権は乙に留保するものとし、甲は契約目的の範囲で非独占的に利用できるものとする。
- 権利帰属の範囲限定:
権利帰属の対象は、本契約に基づく業務の遂行により創作された成果物に限定する。
- 競業・副業:
乙は機密情報の不正利用を行わない。これに反しない限り、本契約に支障のない範囲で副業を行うことができる。
- 賠償責任の上限・除外:
乙の賠償責任の上限は当該契約額とし、間接・特別・逸失利益は除外する。
- 解除要件:
重大な違反があり、相当期間内に是正されない場合に限り解除できる。
- 支払い・検収:
検収完了後30日以内に支払う。納品受領日から◯営業日以内に合否通知がない場合、翌営業日に自動検収とする。
** 交渉の進め方メモ(実務) [#ze0f3fed]
- まずは**代替案を提示**(上記テンプレを引用)。
- 妥協点は「利用範囲の限定」「責任上限の金額」「報告頻度」など定量化。
- 重要条項は**メール/議事録**で合意文言を残す。
- 最終版PDFは**ハッシュ値**を控え、保存場所(GitHub Privateなど)を一元管理。
** 参考運用(個人→小集団化を見据えて) [#o8d613ec]
- GitHubのPrivateリポに「contracts/」フォルダを作り、案件ごとに下記構成で保存:
contracts/
├─ YYYYMMDD_clientA/
│ ├─ draft.pdf
│ ├─ redlines.pdf
│ └─ final_signed.pdf
└─ README.md(交渉経緯メモ)
- Issueテンプレで「チェックリスト」を埋める運用にすると抜け漏れが減る。
** 免責 [#b4f45687]
本記事は個人の経験に基づく一般的な整理であり、法的助言ではありません。重要な契約判断は、弁護士・社労士など適切な専門家にご相談ください。
* リンク [#rae074c6]
【注意喚起】フリーランス・業務委託の泣き寝入り続出中!あなたの会社が加害者側になっているかも?
https://zenn.dev/vteacher/articles/article-tanaka-20250909