東芝、キオクシア、エルピーダメモリ...日本の半導体産業を振り返ると、「なぜ負けたのか」という問いに行き着く。本稿では、技術流出や経営判断の問題を掘り下げ、日本の経営教育の欠陥にまで踏み込んで考察する。
キオクシアはもともと東芝のNAND型フラッシュメモリ事業部門だった。
NANDフラッシュは東芝とサンディスクが共同発明した技術であり、日本発の重要なイノベーションだった。しかし今やその事業も外資の手に渡っている。
東芝は2001年頃にDRAM事業から撤退した。背景には以下がある。
日本最後のDRAMメーカーだったエルピーダメモリは2012年に経営破綻した。
| 破綻の要因 | 詳細 |
| リーマンショック | DRAM価格が暴落 |
| 超円高 | 1ドル=80円台で輸出競争力喪失 |
| サムスンの攻勢 | 赤字覚悟の増産による「チキンレース」 |
現在、エルピーダの広島工場は米マイクロンの拠点として稼働している。日本人技術者は残っているが、利益はアメリカに流れる構図だ。
| メーカー | 本社 |
| サムスン | 韓国 |
| SKハイニックス | 韓国 |
| マイクロン | アメリカ |
この3社による寡占状態であり、日本メーカーは存在しない。AIブームによるHBM需要で各社とも好調だが、日本はその恩恵を受けられない。
韓国への技術流出は業界では公然の秘密だった。
ただし、技術流出は「きっかけ」に過ぎない。
より本質的な敗因は、技術を競争優位の源泉と見なさなかったことにある。
端的に言えば、「目に見えない資産の価値がわからなかった」。
貸借対照表に載らない資産を軽視する経営は、車の運転に例えるならフロントガラスの中央が曇った状態で走っているようなものだ。
しかも、見えないことに気づいていなかった。技術者の警告は数字に出ていないから無視された。
「経営に必要な知識とは何か」の定義が狭すぎた
財務諸表が読めれば経営できるという幻想。実際には技術・人材・知財・地政学など、見えないものを見る力こそが経営の本質だった。
ラピダスは2nm世代の最先端ロジック半導体を目指すが、DRAMには参入しない。理由は明確だ。
日本政府の選択は「自前でDRAMを復活させる」ではなく、マイクロンやTSMCを誘致する方向だ。
日本の半導体産業の敗北は、単なる技術競争の敗北ではない。経営者が何を見て、何を見なかったかの問題だ。
無形資産、技術者、将来の競争力。これらを軽視した代償は大きい。ラピダスの成否にかかわらず、この教訓を次の世代に伝えることが、せめてもの責務だろう。